HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。
既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。
-サンプリング wikipediaより引用
要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。
「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。
この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。
「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。
ってことで、第41回目はShing02の元ネタを探っていきましょう!
Shing02は1975年生まれ、東京都出身のMC。幼少期をタンザニアとイギリスで過ごし、千葉で育ち、15歳でカリフォルニアへ移住。UCバークレー卒業後、米国を拠点に活動してきました。1999年の『緑黄色人種』、2002年の『400』、2008年の『歪曲』。そしてNujabesとの数々の共作です。
本人のプロフィールはPLAY MAGAZINEのアーティスト名鑑でも紹介しています。
今回は予告編です。第27回Nujabes編で「Shing02編ではLuv(sic)シリーズの全体像を掘り下げる」と書きました。まずその約束から果たしましょう。
Luv(sic)シリーズの元ネタ
NujabesとShing02による全6部作「Luv(sic)」。Pt.4以降はNujabesの没後に完成し、2015年に『Luv(sic) Hexalogy』として集成されました。
ネタ帳にある登録はPt.1のリミックス、Pt.2、Pt.3、Part6の4曲分。原曲系の3曲はいずれもブラジルの巨匠Ivan Linsです。Pt.1原曲とPt.4・Pt.5はネタ帳に登録がないため、その点は正直にお伝えしたうえで進めます。
Shing02 / Luv (Sic) Pt.2
Nujabes - Luv(sic) Part 2 feat. Shing02 (Official Audio)
Ivan Lins - Qualquer Dia
元ネタは、Ivan Lins(イヴァン・リンス)の「Qualquer Dia」。
シリーズの軸はここから始まります。ブラジル音楽の名匠のメロディが、NujabesのビートとShing02の言葉の下敷きになっているんです。
Ivan Lins - Qualquer Dia
Shing02 / Luv (Sic) Pt.3
シリーズ最大の代表曲。第27回Nujabes編でも紹介した組み合わせですが、全体像を語るうえで外せないので改めて。
Nujabes - Luv(sic.) pt3 (feat. Shing02) (Official Audio)
Ivan Lins - Tens (Calmaria)
元ネタは、Ivan Linsの「Tens (Calmaria)」。『Modal Soul』(2005)収録のPt.3も、やはりIvan Linsでした。
Ivan Lins - Tens (Calmaria)
Shing02 / Luv(sic) Grand Finale / Part6
シリーズの完結編です。
Nujabes - Luv(sic) Grand Finale feat. Shing02 (Official Audio)
Ivan Lins - Choro Das Aguas
元ネタは、Ivan Linsの「Choro Das Aguas」。
始まり(Pt.2)も、真ん中(Pt.3)も、終わり(Part6)もIvan Lins。Nujabesがこのシリーズに一貫して選んだのがブラジルの名匠だった、という全体像が見えてきます。
Ivan Lins - Choro Das Aguas
なおPt.4とPt.5は、ネタ帳に登録がないため本編では扱えません。登録が追加されたら、また改めて。
Shing02 / Luv (Sic) Pt.1 (Message Remix by DJ Hana)
シリーズの番外編として、Pt.1のリミックス版の登録を紹介します。Pt.1の原曲自体の登録はネタ帳にありません。下の埋め込みは原曲Pt.1です。
Nujabes - Luv(sic) feat. Shing02 (Official Audio)
井上あずみ - めぐる季節
リミックス版の元ネタとして登録されているのは、井上あずみの「めぐる季節」。
Ivan Linsで貫かれたシリーズの中で、このリミックスだけは日本の楽曲が元ネタという例外。この「外し」も含めて、シリーズの面白さだと思います。
井上あずみ - めぐる季節
Shing02の曲を元ネタと比較してみましょう
Shing02 / 銃口
ここからはソロの曲を。まずは初期の代表曲から。
Shing02 - 銃口
Joe Chambers - Mind Rain
元ネタは、ジャズ・ドラマーのJoe Chambersの「Mind Rain」。
Shing02の言葉の鋭さの下敷きに、ジャズの名演。第27回で見たNujabesの掘りとも通じる、ジャズへの深い傾倒が分かります。
Joe Chambers - Mind Rain
Shing02 / 少年ナイフ
和モノ枠を1曲。
Shing02 - 少年ナイフ
桜井妙子 - ミスター・アンデルセン
元ネタは、桜井妙子の「ミスター・アンデルセン」。
「少年ナイフ」と「ミスター・アンデルセン」。タイトル同士の言葉遊びのような対応も含めて、聴き比べが楽しい組み合わせです。
桜井妙子 - ミスター・アンデルセン
Shing02 / Rokkasho (DJ Nozawa Yumore Remix)
最後は、社会派の顔が見える1曲を。Shing02は2006年に坂本龍一の「STOP ROKKASHO」に参加しています。
Shing02 - Rokkasho (Yumore Remix)
James Horner - Braveheart Theme
このリミックス版の元ネタとして登録されているのは、映画『ブレイブハート』のテーマ、James Hornerの「Braveheart Theme」。
六ヶ所村を題材にした曲の下敷きに、映画音楽の壮大なテーマ。メッセージの強さと音の大きさが呼応しています。
James Horner - Braveheart Theme
最後に
今回のShing02の元ネタは、Ivan Lins(3曲)、井上あずみ、Joe Chambers、桜井妙子、James Hornerという布陣でした。
Luv(sic)シリーズはIvan Linsで貫かれ、ソロではジャズ、和モノ、映画音楽まで。国境を跨いで活動してきたバイリンガルMCらしい掘りの広さだと思います。
ネタ帳には「400」(Amon Tobin)や「Lift the Fog Up (Eccy Remix)」(上原ひろみ)なども残っているので、Shing02編の後編もいずれ。そしてLuv(sic)のPt.4・Pt.5の登録が増えたら、シリーズの続きも必ず。
これで今のキューは一巡しましたが、ネタ帳にはまだまだ掘り残しがあります。
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!