HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。
既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。
-サンプリング wikipediaより引用
要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。
「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。
この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。
「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。
ってことで、第15回目はスチャダラパーの元ネタを探っていきましょう!
BOSE、ANI、SHINCOの3人組。1990年のデビュー以来、ずっと「ゆるい」「おもしろい」と言われ続けてきたグループですが、ちょっと待ってください。彼らのトラックをよく聴いてみると、使われているネタの渋さがハンパじゃないんです。
実際、僕のネタ帳の中でもスチャダラパーは別格の存在で、1曲の中に何個もネタが仕込まれていることもしょっちゅう。あの脱力感は、膨大なレコードの山を知り尽くした上で、あえて力を抜いているからこそ出せる味なんですよね。
今回はその中から、まずはここから!という5曲を厳選して紹介します。聴き比べてみてください!
スチャダラパーの曲を元ネタと比較してみましょう
スチャダラパー / サマージャム'95
まずは日本の夏の定番中の定番、『5th WHEEL 2 the COACH』からシングルカットもされたこの曲です。
キラキラした夏!というよりは、暑くてダラダラして、でもなんだか忘れられないあの夏休みの午後。そんな空気感をここまで見事に音にできるのはスチャダラパーだけだと思います。何年経っても、夏が近づくたびに聴き直してしまうんですよね〜。
スチャダラパー - Summer Jam '95(YouTube Topic)
The New Birth - Got to Get a Knutt
このけだるくて気持ちいいグルーヴの土台が、70年代のファンク・バンド、The New Birth(ザ・ニュー・バース)の「Got to Get a Knutt」です。1972年のアルバム『Birth Day』に収録された曲ですね。
原曲はもっと泥臭くて、うねるようなファンク。そのうねりが、スチャダラパーの手にかかると東京の夏の夕暮れの空気に変わってしまうんだから、サンプリングってやっぱり面白いですよね。聴き比べると「あ、あの感じはここから来てたのか!」となるはずですよ!
The New Birth - Got to Get a Knutt(YouTube Topic)
スチャダラパー / B-BOYブンガク
同じく『5th WHEEL 2 the COACH』の2曲目。イントロの不穏な空気から一転、この曲のスチャダラパーはとにかくカッコいいんです。
「やっとペンを握る事が出来た」という書き出しの通り、これは彼らなりの"B-BOYとしての文学"の宣言。ユーモア担当みたいに言われることの多い3人ですが、ラップのスキルで真っ向勝負している曲を聴くと、やっぱり只者じゃないなと毎回思います。
スチャダラパー - B-Boyブンガク(Apple Music)
The Whatnauts - Why Can't People Be Colors Too?
元ネタはボルチモアのソウル・グループ、The Whatnauts(ワットノーツ)が1972年に発表した「Why Can't People Be Colors Too?」。アルバム『On The Rocks』に収録されています。
実はこの曲、冒頭のドラムがブレイクとしてあまりにも有名で、USのヒップホップでも繰り返し使われてきた大ネタ中の大ネタなんです。そんな王道のブレイクを、B-BOYを名乗る曲の土台に持ってくる。これ以上ないくらい正しい使い方ですよね!
The Whatnauts - Why Can't People Be Colors Too?(YouTube Topic)
スチャダラパー / アーバン文法
ライブでも定番のこの曲。タイトル通り、都会の言葉の文法をスチャダラ流に解体してみせた、言葉遊び全開の1曲です。
軽いノリで聴き流してしまいがちですが、トラックをよく聴いてみてください。めちゃくちゃファンキーなんですよ、これが。
Vicki Anderson - The Message From The Soul Sisters
そのファンクの源が、Vicki Anderson(ヴィッキ・アンダーソン)の「The Message From The Soul Sisters」。Myra Barnes(マイラ・バーンズ)名義で1970年に発表された、ジェームス・ブラウン作のキラー・ファンクです。
ヴィッキ・アンダーソンはJBファミリーの女性シンガーで、あのジェームス・ブラウン本人が「今まで見た中で最高のシンガー」と認めたほどの実力者。その最強の歌声とJB印のグルーヴが、渋谷の街の文法に化けているわけです。そりゃあカッコよくなるに決まってますよね笑
Vicki Anderson - The Message from the Soul Sister
スチャダラパー / ジゴロ7
『5th WHEEL 2 the COACH』収録の、お祭りみたいに賑やかな1曲。ゲストも大勢参加していて、スチャダラパーの周りにはいつも楽しそうな人たちが集まってくるんだなあ、というのが音から伝わってきます。
The Five Stairsteps - Don't Change Your Love
こんなに賑やかな曲の元ネタが、実はとっても甘いソウルだというのが今回一番のギャップかもしれません。元ネタはシカゴのファミリー・グループ、The Five Stairsteps(ファイヴ・ステアステップス)の「Don't Change Your Love」。1968年の曲で、作詞作曲はなんとカーティス・メイフィールドです。
彼らは「O-o-h Child」で知られるグループですが、この曲もコーラスの美しさは格別。その甘いハーモニーが、ジゴロ7の底抜けな明るさの下地になっていると思うと、選曲のセンスに唸らされます。
The Five Stairsteps - Don't Change Your Love(YouTube Topic)
スチャダラパー / GET UP AND DANCE
最後は番外編的にこの曲を。『スチャダラ外伝』収録で、子供番組『ポンキッキーズ』のオープニングで聴いた!という人も多いんじゃないでしょうか。僕も世代的に、朝からこのノリの良さに元気をもらっていたクチです笑
演奏は東京スカパラダイスオーケストラ。LB NATIONの面々によるマイクリレーも聴きどころです。
スチャダラパー - Get Up and Dance(Apple Music)
Freedom - Get Up And Dance
この曲はサンプリングというより、ファンク・バンドFreedom(フリーダム)が1979年に発表した「Get Up And Dance」のカバーが土台になっています。
そして面白いのが、僕のネタ帳ではこの曲のネタとして、もう1曲、Positive Kの「I Got A Man」も挙がっていること。実はPositive Kのあの曲も、このFreedomのフレーズをサンプリングしているんです。つまり大元は同じFreedom。ヒップホップの現場で愛され続けてきたフレーズが、日本のお茶の間の朝にまで届いていた。そう考えると、なんだか感動しませんか?
Freedom - Get Up And Dance
最後に
今回はスチャダラパーの元ネタを探っていきました!いかがでしたでしょうか?
The New Birth、The Whatnauts、Vicki Anderson、The Five Stairsteps、そしてFreedom。並べてみると、70年代のソウルとファンクの名盤ガイドみたいなラインナップになりましたね。
スチャダラパーの「ゆるさ」は、決して手抜きなんかじゃなくて、この膨大なネタの山を知り尽くした上での余裕なんだと思います。まだまだネタ帳には彼らの曲が山ほど残っているので、いつか第2弾もやりたいですね!
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!