本文へ
JAPANESE HIP-HOP
MUSIC / CULTURE / PEOPLE
⌕
特集・考察

日本語ラップの元ネタを探せ! 第20回 Dragon Ash 編!!!

HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!

まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。

既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。

-サンプリング wikipediaより引用

要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。

「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。

この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。

「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。

ってことで、第20回目はDragon Ashの元ネタを探っていきましょう!

「ロックバンドじゃないの?」と思った方、その通りです。Dragon Ashはミクスチャー・ロックのバンドとして知られています。ただ、1996年の結成から2003年の『HARVEST』あたりまでの作品は、ヒップホップの楽曲として取り上げられることが主だった時期で、Kjのラップを核にした曲がバンドの代表曲にずらりと並んでいます。

そして何より、ネタ帳を開いてみたら彼らのサンプリングの筋の良さがすごいんです。敬愛するロックバンドから、90年代ヒップホップの古典から、ファンクの大定番まで。しかも前回のZEEBRA編とも物語がつながっていきます。

今回はその中から7曲を紹介します!


Dragon Ashの曲を元ネタと比較してみましょう

Dragon Ash / Grateful Days feat. ACO, ZEEBRA

まずは、今回の核になるこの曲から。1999年発売、バンド初のオリコン1位を記録した大ヒット曲です。

Kjが「リスペクトして止まない」ZEEBRAを迎えた共演曲として知られますが、この出会いが後に日本語ラップ最大級のビーフへ発展していく話は、当サイトのビーフ年表「ZEEBRA vs Kj」で詳しく書いています。あわせて読むと、この曲の聴こえ方が変わるはずです。

残念ながらこの曲は公式のMVがなく、ストリーミング配信もされていないので、ここではファン投稿の音源を置いておきます。

Dragon Ash - Grateful Days

The Smashing Pumpkins - Today

元ネタは、Kjが敬愛するThe Smashing Pumpkins(スマッシング・パンプキンズ)の「Today」(1993年、アルバム『Siamese Dream』収録)です。

あのきらめいたギターのフレーズが、この曲の切なさと高揚感を支えています。ヒップホップの作法で、大好きなロックバンドへの愛を表明する。これがDragon Ash流のリスペクトの形なんですね。

The Smashing Pumpkins - Today


Dragon Ash / I LOVE HIP HOP

続いては、タイトルがすべてを物語っているこの曲。1999年、ちょうどGrateful Daysと同時期の作品です。

Dragon Ash - I LOVE HIP HOP

Betty Wright - Clean Up Woman

この曲のネタ帳の登録は3件あります。まずはソウル/ファンク枠から、Betty Wright(ベティ・ライト)の「Clean Up Woman」(1971年)。あの印象的なギターのカッティングは、ヒップホップでも何度も使われてきた名フレーズです。

Betty Wright - Clean Up Woman

Da Bush Babees - We Run Things (It's Like Dat)

2つ目は、90年代ニューヨークのグループ、Da Bush Babeesの「We Run Things (It's Like Dat)」(1994年)。

Da Bush Babees - We Run Things

A Tribe Called Quest - 1nce Again

そして3つ目が、A Tribe Called Questの「1nce Again」(1996年)です。

ソウルとファンクの土台に、自分たちが夢中になった90年代ヒップホップそのものを重ねてしまう。「I LOVE HIP HOP」というタイトルは伊達じゃない、好きなものを全部乗せた自己紹介になっているんです。

A Tribe Called Quest - 1nce Again


Dragon Ash / Summer Tribe

2000年のシングルで、夏のDragon Ashと言えばこの曲、という人も多いはず。ビーフ年表では、ZEEBRAとの関係がこじれていく「決定打」になったとも伝えられる曲です。

Dragon Ash - Summer Tribe

Joe Sample - In All My Wildest Dreams

ネタ帳では、この曲の元ネタとしてJoe Sample(ジョー・サンプル)の「In All My Wildest Dreams」が登録されています。1978年のアルバム『Rainbow Seeker』収録で、The Crusadersでも知られる鍵盤奏者のソロ名義です。

なお資料によっては、このサンプルはカップリング曲のトラックで使われていると説明されることもあります。いずれにせよ、あの夏の午後のような浮遊感の出どころはこの人の鍵盤だった、というのは間違いなさそうです。

Joe Sample - In All My Wildest Dreams


Dragon Ash / 陽はまたのぼりくりかえす

初期の代表曲、1998年の2ndシングルです。

Dragon Ash - 陽はまたのぼりくりかえす

Queen - We Will Rock You

この曲の冒頭のドラムには、Queenの「We Will Rock You」(1977年)のリズムが用いられていることが知られています。

ドン、ドン、パンッ。世界でいちばん有名な「足踏みと手拍子」のリズムを、自分たちの曲の幕開けに持ってくる。ロックバンドであるDragon Ashが、世界的ロックアンセムをヒップホップの作法で迎え入れた瞬間だと思います。

Queen - We Will Rock You


Dragon Ash / Rock the Beat

タイトル通りの宣言のようなこの曲も、ネタ選びが直球です。

Dragon Ash - Rock the Beat

LL Cool J - I Can't Live Without My Radio

元ネタは、LL Cool Jの「I Can't Live Without My Radio」(1985年)。17歳のLL Cool Jが「ラジオなしでは生きられない」と歌った、ヒップホップ創世記の古典中の古典です。

「ビートをロックする」側の曲が、「ラジオを運んで街を歩く」側の曲を土台にしている。タイトル同士の呼応まで含めて、ヒップホップへの愛の表明になっているのが面白いところです。

LL Cool J - I Can't Live Without My Radio


Dragon Ash / DEEP IMPACT feat.ラッパ我リヤ

ラッパ我リヤを迎えたこの曲は、Dragon Ashのファンクな面がよく出た1曲です。

Dragon Ash - DEEP IMPACT

Average White Band - Schoolboy Crush

元ネタは、スコットランドのファンクバンド、Average White Bandの「Schoolboy Crush」(1975年)です。

この曲は世界中のヒップホップで使い倒されてきた大定番ネタで、あの粘っこいグルーヴは一度聴いたら耳に残ります。90年代日本語ラップの当事者であるラッパ我リヤと、この王道ネタの組み合わせ。分かっている人たちが作った曲だな、という感じがしますよね。

Average White Band - Schoolboy Crush


Dragon Ash / M

最後は、連載の読者にこそ聴いてほしいこの曲です。

Dragon Ash - M

Johnny Hammond - Call On Me

元ネタは、Johnny Hammondの「Call On Me」。ピンときた方、その通りです。前回の第19回ZEEBRA編で、ソロデビュー曲「真っ昼間」の元ネタとして紹介した、あの曲です。

同じネタを、ZEEBRAとDragon Ashの両方が使っている。リスペクトから始まって、やがてビーフにまで発展した2組が、実は同じレコード棚を共有していたという事実は、サンプリングという文化の面白さをそのまま表している気がします。

Johnny Hammond - Call On Me


最後に

今回のDragon Ashの元ネタは、The Smashing Pumpkins、Betty Wright、Da Bush Babees、A Tribe Called Quest、Joe Sample、Queen、LL Cool J、Average White Band、Johnny Hammondという布陣でした。

ロックとヒップホップのあいだを行き来してきたバンドだからこそ、ネタの棚もロック・ソウル・ファンク・ヒップホップを横断している。そしてGrateful DaysからMまでをたどると、前回のZEEBRA編とビーフ年表の物語が1本の線につながっていくのも、今回の大きな収穫でした。

ネタ帳には「Canvas」(またもThe Smashing Pumpkins)や「21st Century Riot」(Eddie Bo)など、まだ面白い組み合わせが残っているので、Dragon Ash編もいずれ後編をやりたいところです。

ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!

もう少し読む