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特集・考察

日本語ラップの元ネタを探せ! 第24回 dj honda 編!!!

HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!

まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。

既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。

-サンプリング wikipediaより引用

要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。

「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。

この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。

「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。

ってことで、第24回目はdj hondaの元ネタを探っていきましょう!

連載初の「主戦場は日本国外」という回です。dj hondaは北海道出身。17歳で上京してDJを始め、1992年には単身ニューヨークへ渡って、DJバトル「Battle for World Supremacy」で準優勝。1995年のデビュー作『h』、1997年の『h II』は米Billboardのチャートにも入りました。

共演者の顔ぶれが、そのまま90年代USヒップホップの名鑑になる男。今回はそのネタ帳から7曲を紹介します!


dj hondaの曲を元ネタと比較してみましょう

dj honda / Travellin' Man feat. Mos Def

まずは最大の代表曲から。『h II』(1997年)収録で、シングルとして米Hot Rap Songsで17位に入り、16週もチャートに居続けたという、dj hondaの名を本場に確立した1曲です。

dj honda - Travellin' Man feat. Mos Def

Johnny Bristol - Memories Don't Leave Like People Do

ネタ帳に登録されている元ネタは、Johnny Bristol(ジョニー・ブリストル)の「Memories Don't Leave Like People Do」(1974年)です。モータウンの作家/プロデューサーとして知られる人の、哀切なソウルですね。

Johnny Bristol - Memories Don't Leave Like People Do

実はこの曲、元ネタについては正直にお伝えしておきたいことがあります。『h II』の公式ライナーノーツに載っているサンプルクレジットには、別の曲々が記載されていて、Johnny Bristolの名前がないんです。ライナーノーツは権利処理が済んだサンプルだけを載せる慣習があるとも言われ、資料によって情報が食い違う曲ではあるのですが、ネタ帳の登録はこうなっている、という形で紹介させてください。看板曲にまつわる、こういう謎もまたディグの面白さだと思います。


dj honda / Out for the Cash (Remix)

デビュー作『h』の看板曲のリミックス版を。原曲はCommon、Fat Joe、The Beatnutsが参加した、dj hondaの出世作です。

dj honda - Out for the Cash (Remix)

Melvin Bliss - Synthetic Substitution

元ネタは、Melvin Bliss(メルヴィン・ブリス)の「Synthetic Substitution」(1973年)です。

Bernard Purdieのドラムブレイクで知られる、ヒップホップ史上最も使われてきたネタの1つ。そしてこの曲、連載読者にはおなじみのはず。第17回BUDDHA BRAND編で「Funky Methodist」の元ネタとして紹介したのと同じ曲なんです。東京のブッダとニューヨークのhondaが、同じブレイクを選んでいた。サンプリング文化の普遍性を感じる組み合わせです。

Melvin Bliss - Synthetic Substitution


dj honda / Team Players feat. KRS-One & Doe-V

『h II』からは、KRS-Oneを迎えたこの曲も外せません。

dj honda - Team Players feat. KRS-One

Bob James - Blue Lick

元ネタは、Bob James(ボブ・ジェームズ)の「Blue Lick」(1979年)。公式クレジットとも一致する組み合わせです。

Bob Jamesも連載では2度目。第19回ZEEBRA編では「Tappan Zee」でした。サンプリングの世界で最も愛される鍵盤奏者の1人が、日本人のレコードにも繰り返し登場するんですよね。

Bob James - Blue Lick


dj honda / Biz Freestyle feat. Biz Markie

『h』のUS版からは、Biz Markieのフリースタイルを。ネタ帳には元ネタが2件登録されています。

dj honda - Biz Freestyle feat. Biz Markie

The Crusaders - Marcella's Dream

1つ目は、フュージョンの大物The Crusaders(ザ・クルセイダーズ)の「Marcella's Dream」(1978年)。

The Crusaders - Marcella's Dream

Lafayette Afro Rock Band - Hihache

2つ目は、Lafayette Afro Rock Bandの「Hihache」(1973年)。こちらもブレイクビーツの古典中の古典です。

この2件は公式クレジットとも完全に一致しています。フリースタイルという「素の実力」が問われる形式の土台に、鉄板の古典を2枚重ねる。dj hondaの職人芸が光る選曲だと思います。

Lafayette Afro Rock Band - Hihache


dj honda / On the Mic feat. Cuban Link, Juju, A.L. & Missin' Linx

『h II』のUS版収録曲で、シングルとしてチャートにも入った1曲を。参加MCの豪華さがdj hondaの人脈そのものです。

dj honda - On the Mic

Rick James - Mary Jane

元ネタは、Rick James(リック・ジェームズ)の代表曲「Mary Jane」(1978年)です。

ファンクの帝王の名曲を土台に、ニューヨークのMCたちがマイクリレーをする。王道のネタを王道に使う気持ちよさがこの曲にはあります。公式クレジットとも一致する組み合わせです。

Rick James - Mary Jane


dj honda / El Presidente feat. Jeru the Damaja

『h 2000』期のシングルからは、Jeru the Damajaを迎えたこの曲を。

dj honda feat. Jeru the Damaja - El Presidente

The Moody Blues - The Voyage

元ネタは、プログレッシヴ・ロックの大物The Moody Blues(ムーディー・ブルース)の「The Voyage」(1969年)です。

今回いちばんの意外性はこれ。ソウルでもファンクでもジャズでもなく、イギリスのプログレの大作から持ってくる。ヒップホップの「外側」まで掘りに行く耳が、dj hondaのネタ帳の広さなんですよね。

The Moody Blues - The Voyage


dj honda / Old School Jam feat. Donald D, Kurtis Blow & Prince Whipper Whip

最後は『h』の日本版に収録された、この曲を。参加しているのはDonald D、Kurtis Blow、Prince Whipper Whipという、ヒップホップ創成期のレジェンドたちです。

dj honda - Old School Jam

Banbarra - Shack Up

元ネタは、ファンクバンドBanbarraの「Shack Up」(1975年)。こちらもブレイクビーツの古典として知られる1曲です。

創成期のレジェンドを迎えた曲の土台が、同じ時代のファンクの古典。「Old School Jam」というタイトルそのままの、筋の通った組み合わせで締めましょう。

Banbarra - Shack Up


最後に

今回のdj hondaの元ネタは、Johnny Bristol、Melvin Bliss、Bob James、The Crusaders、Lafayette Afro Rock Band、Rick James、The Moody Blues、Banbarraという布陣でした。

やっぱり目立つのは、ブレイクビーツの古典の厚さ。Synthetic Substitution、Hihache、Shack Up、Mary Janeと、ヒップホップの土台そのもののような曲がずらりと並ぶ。本場のど真ん中で戦ってきた人のネタ帳は、サンプリング文化の教科書みたいだなと思いました。

ネタ帳には「F-k Dat」(Ramsey Lewis)や「FOR EVERYDAY THAT GOES BY」(The Crusaders「Street Life」)など、まだ面白い組み合わせが残っているので、dj honda編もいずれ後編をやりたいところです。

ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!

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