HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。
既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。
-サンプリング wikipediaより引用
要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。
「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。
この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。
「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。
ってことで、第17回目はBUDDHA BRANDの元ネタを探っていきましょう!
DEV LARGE、CQ、NIPPS、DJ MASTERKEYの4人。彼らはニューヨークで出会い、現地で本場のヒップホップを吸収してから日本に帰ってきた、いわば"逆輸入"のグループです。
その音作りの中心はDEV LARGE。彼のトラックは、USのプロデューサーと比べても何ひとつ引けを取らないどころか、「日本人がここまでやるのか」と本場のヘッズまで唸らせたレベルでした。2015年に45歳の若さで亡くなってしまったのが、今でも本当に惜しいです。
今回は、そんなDEV LARGEのネタ使いの凄みが分かる4曲を紹介します!
BUDDHA BRANDの曲を元ネタと比較してみましょう
BUDDHA BRAND / 人間発電所
まずは説明不要の、日本語ラップ史上に残る大名曲です。1996年のメジャーデビューシングルで、「自力で発電して生きていけ」というメッセージは、時代を越えて聴く人の背中を押し続けています。
このトラックの気持ちよさといったら! 日本語ラップを聴き始めた頃にこの曲に出会った人は、漏れなく「何だこのカッコよさは」と衝撃を受けたはずです。僕もそのひとりです笑
BUDDHA BRAND - 人間発電所 (Original '95 Vinyl Version)
The Blackbyrds - Summer Love
この浮遊感のあるトラックの土台のひとつが、The Blackbyrds(ザ・ブラックバーズ)の「Summer Love」。1974年、ドナルド・バード門下の若手たちによるジャズファンクの名盤『The Blackbyrds』に収録された曲です。
The Blackbyrds - Summer Love (Official Visualizer)
実は僕のネタ帳では、「人間発電所」だけで他にも、日本のジャズ、鈴木勲トリオの「Aqua Marine」や、King James Versionの「I'll Still Love You」など、複数の元ネタが登録されています。1曲の中に和洋の名曲が何層にも重なっている。DEV LARGEのトラックが分厚く聴こえる理由はここにあります。
ちなみにKing James Versionの「I'll Still Love You」は、Awichの「Bad Bad」でも使われているネタなんです。世代もスタイルも違う2組が同じネタに辿り着いているの、面白いですよね!
BUDDHA BRAND / ブッダの休日
デビューシングルに続くシングル曲。「人間発電所」の熱さとは対照的に、タイトル通り休日感のある、メロウで気持ちいい1曲です。ハードな曲だけじゃない。この緩急の付け方もブッダの魅力なんですよね。
Minnie Riperton - Alone In Brewster Bay
元ネタのひとつが、Minnie Riperton(ミニー・リパートン)の「Alone In Brewster Bay」。1975年のアルバム『Adventures In Paradise』に収録された曲です。
「Lovin' You」で知られる彼女の、あの天まで届くような歌声と静かなギターのアルペジオ。この澄んだ空気感が「ブッダの休日」の土台になっていると思うと、DEV LARGEの引き出しの広さに改めて驚かされます。ハードなネタだけじゃなく、こういう繊細な曲も掘っているんですよね。
Minnie Riperton - Alone In Brewster Bay
BUDDHA BRAND / Funky Methodist
彼らの出世作となったプロモ12インチの表題曲です。配布されただけでストリートで話題になったという、当時の衝撃を物語る1曲ですね。
タイトル通りとにかくファンキー。次から次へとネタが切り替わっていく感覚は、まるでDEV LARGEのレコード棚を覗き見しているみたいです。
Melvin Bliss - Synthetic Substitution
その中核にあるのが、Melvin Bliss(メルヴィン・ブリス)の「Synthetic Substitution」。1973年にシングルのB面として発表された曲ですが、冒頭のドラムブレイク(叩いているのは名ドラマーのバーナード・パーディです!)は、ヒップホップで最もサンプリングされたブレイクのひとつとして知られています。
僕のネタ帳ではこの曲のネタとして他にも、Donald Byrdの「Flight Time」やESGの「UFO」など、ブレイクの王道がずらりと並んでいます。本場のDJたちが奪い合うネタを、ニューヨーク帰りの4人が日本のど真ん中に持ち込んだ。その構図がこの曲には詰まっていると思います。
Melvin Bliss - Synthetic Substitution (Official Lyric Video)
BUDDHA BRAND / 黒船
最後は番外編としてこの曲を。1853年にペリーが来た時の黒船じゃありませんが、ニューヨークから帰ってきた4人が日本のシーンに与えた衝撃は、まさに黒船級だったはずです。タイトルの付け方からしてニヤリとさせられますよね。
Chico Hamilton - Genghis
元ネタはジャズ・ドラマーの巨匠、Chico Hamilton(チコ・ハミルトン)が1973年に発表したアルバム『Chico The Master』に収録された「Genghis」。リトル・フィートをバックに迎えた、ジャズとロックが混ざり合う一枚の中の、ゆったりと不穏な空気を漂わせる曲です。
チンギス・ハーンと黒船。東西の"外からやってきた力"同士を重ねるようなネタ選び、洒落が効いていて最高ですよね!
最後に
今回はBUDDHA BRANDの元ネタを探っていきました!いかがでしたでしょうか?
The Blackbyrds、Minnie Riperton、Melvin Bliss、Chico Hamilton。並べてみると、DEV LARGEのレコード棚の守備範囲の広さと、それを日本のヒップホップとして成立させる手腕の凄さがよく分かります。
彼らの曲は残念ながら配信ではほとんど聴くことができません。だからこそ、こうして元ネタから辿っていく楽しみがいっそう大きいグループだと思います。レコードやCDを持っている人は、ぜひ元ネタと聴き比べてみてください!
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!