HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。
既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。
-サンプリング wikipediaより引用
要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。
「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。
この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。
「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。
ってことで、第26回目はCHOUJIの元ネタを探っていきましょう!
前回のかせきさいだぁに続いて、元ネタの背骨が日本側になる回ですが、今度は歌謡曲と沖縄です。CHOUJIは石垣島出身、沖縄本島を拠点にするラッパーで、「路地裏のヒーロー」の異名を持つ男。2005年に地元のイベントで言霊MAFIAのライブを見て衝撃を受け、日本語ラップを始めました。
『B面』以前だけでアルバム約15枚という多作ぶりに加え、ビートもミックスも自分でこなし、スタジオを運営して若手の柊人を押し上げたことでも知られる、沖縄シーンの基盤を築いた立役者です。今回はそのネタ帳から7曲を紹介します!
CHOUJIの曲を元ネタと比較してみましょう
CHOUJI / 油断するな
まずはアルバム『taerutOKI』の1曲目を飾る、この曲から。
CHOUJI - 油断するな
登川誠仁 - 油断しるな
元ネタは、沖縄民謡の大御所登川誠仁(とかわ せいじん)の「油断しるな」です。
沖縄の民謡を、沖縄のラッパーがほぼ同名のタイトルで使う。「外から借りてくる」サンプリングではなく、「地元の伝統を受け継ぐ」サンプリング。この回の象徴になる組み合わせだと思います。
登川誠仁 - 油断しるな
CHOUJI / クソヤッサ feat. MASA-I
続いては、元ネタ側の名前を見て二度見する1曲を(CHOUJI側の音源は今回はテキストのみで紹介します)。
中島みゆき - タクシードライバー
元ネタは、中島みゆきの「タクシードライバー」です。連載に中島みゆきが登場するのは、もちろん初めて。
沖縄のエイサーの掛け声を思わせる「ヤッサ」のタイトルと、昭和の歌謡曲の王道。CHOUJIのネタ帳は、USのソウルやファンクではなく、日本の歌の財産から掘られているんですよね。
中島みゆき - タクシードライバー
CHOUJI / OH MY iLL GIRL feat. RITTO & KOJOE
同郷・石垣島のRITTOと、KOJOEを迎えた1曲は、タイトルからして元ネタへの宣言になっています。
CHOUJI - OH MY iLL GIRL feat. RITTO & KOJOE
尾崎豊 - OH MY LITTLE GIRL
元ネタは、尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」。「LITTLE」を「iLL」に替えたタイトルそのものが、オマージュの宣言です。
世代も土地も違う尾崎豊のラブソングを、沖縄のMCたちがどう料理したか。タイトルで先に種明かしをしている分、聴き比べの楽しさが増すタイプの組み合わせですね。
尾崎豊 - OH MY LITTLE GIRL
CHOUJI / 車の中でかくれて火をつけよう feat. NAGAHIDE & TA-DA
タイトルもじりの、もう1例を。長年の盟友NAGAHIDEとTA-DAを迎えた曲です。
CHOUJI - 車の中でかくれて火をつけよう
Mr.Children - 車の中でかくれてキスをしよう
元ネタは、Mr.Childrenの「車の中でかくれてキスをしよう」。Mr.Childrenも連載初登場です。
「キスをしよう」が「火をつけよう」に化ける。この言葉遊びのセンスと、国民的バンドの名曲を臆せず土台に据える度胸。CHOUJIの引用の作法がよく出ている1曲だと思います。
Mr.Children - 車の中でかくれてキスをしよう
CHOUJI & 柊人 / デーン
ここで洋楽も1曲。若手の柊人との共作名義の曲です。
CHOUJI & 柊人 - デーン
The Killers - Mr. Brightside
元ネタは、The Killersの「Mr. Brightside」。2000年代のロックアンセムです。
実はこの曲、ネタ帳の中では電波少女とかkZmも使っている曲なんです。世界的なヒット曲を、日本のラッパーたちがそれぞれの土地で掘り直す。「同じネタ、どう料理する?」というサンプリングの醍醐味が詰まった1曲ですね。
The Killers - Mr. Brightside
CHOUJI / ヘイビーッチ feat. NAGAHIDE & Leo
続いては、連載でも珍しい構造の1曲を。
CHOUJI - ヘイビーッチ feat. NAGAHIDE & Leo
OZROSAURUS - Hey Girl feat. Corn Head
元ネタは、OZROSAURUSの「Hey Girl feat. Corn Head」。つまり元ネタ側が日本語ラップなんです。
この連載では海外のソウルやロックが元ネタの中心でしたが、日本語ラップ同士のサンプリングも当然ある。横浜のOZROSAURUSから沖縄のCHOUJIへ。国内シーンの中での継承という、新しい角度が見える組み合わせです。
OZROSAURUS - Hey Girl feat. Corn Head
CHOUJI / こんな夜ぐらい
最後は、しっとりと締めくくる1曲を。
CHOUJI - こんな夜ぐらい
河島英五 - 酒と泪と男と女
元ネタは、河島英五の「酒と泪と男と女」。昭和フォークの永遠の定番です。
沖縄の路地裏のヒーローが、酒と泪の歌を土台に選ぶ。CHOUJIの歌う「夜」の情感は、こういう先人たちの歌と地続きなんだなと思います。
河島英五 - 酒と泪と男と女
最後に
今回のCHOUJIの元ネタは、登川誠仁、中島みゆき、尾崎豊、Mr.Children、The Killers、OZROSAURUS、河島英五という布陣でした。
前回のかせきさいだぁが、はっぴいえんどやシティポップという日本のポップスの背骨だったのに対して、今回は昭和歌謡・フォーク・沖縄民謡という、もっと土着で情の濃い背骨でした。日本語ラップの「元ネタ」は、海外のレコードだけじゃない。それを2回続けて実感する連載になりました。
ネタ帳には「ハニー」(勝新太郎)や「特別な夜は」(スピッツ)など、まだ面白い組み合わせが残っているので、CHOUJI編もいずれ後編をやりたいところです。
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!