HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。
既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。
-サンプリング wikipediaより引用
要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。
「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。
この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。
「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。
ってことで、第27回目はNujabesの元ネタを探っていきましょう!
今回はラッパーではなく、トラックメイカーの回です。Nujabes(瀬葉淳。アーティスト名は「SEBAJUN」を逆から読んだものです)は、渋谷でレコード店を営みながら自身のレーベルHydeout Productionsを主宰し、ジャジーなサンプリングで世界中のリスナーを魅了したプロデューサー。
『サムライチャンプルー』の音楽でも知られ、J Dillaと並んでローファイ・ヒップホップのルーツと呼ばれる存在です。2010年に36歳の若さで交通事故で亡くなりましたが、その音楽はいまも世界中で聴かれ続けています。今回はそのトラックの元ネタを7曲紹介します!
Nujabesの曲を元ネタと比較してみましょう
Nujabes / Luv (sic.) Pt.3 feat. Shing02
まずは、Shing02との共作シリーズの核になる1曲から。
Nujabes - Luv (sic.) Pt.3 feat. Shing02
Ivan Lins - Tens (Calmaria)
元ネタは、ブラジルのSSWIvan Lins(イヴァン・リンス)の「Tens (Calmaria)」です。
実はネタ帳を眺めると、このシリーズの元ネタはPt.2も最終章のGrand FinaleもIvan Linsなんです。シリーズ全体で1人の作家を掘り続ける。この一貫性こそ、Nujabesの「掘る」という行為への誠実さだと思います。
Ivan Lins - Tens (Calmaria)
Nujabes / Feather feat. Cise Starr & Akin from CYNE
続いては、2ndアルバム『Modal Soul』の冒頭を飾る代表曲を。
Nujabes - Feather
Yusef Lateef - Love Theme From "The Robe"
元ネタは、Yusef Lateef(ユセフ・ラティーフ)の「Love Theme From "The Robe"」。もとは1953年の映画『聖衣(The Robe)』のラブテーマです。
映画音楽がジャズになり、ジャズがヒップホップのビートになる。70年近い時間を超えた継承の連鎖が、この1曲の中に折り重なっているんですね。
Yusef Lateef - Love Theme From "The Robe"
Nujabes / Reflection Eternal
今回いちばん意外な組み合わせがこちら。
Nujabes - Reflection Eternal
巨勢典子 - I Miss You
元ネタは、日本のジャズ・ピアニスト巨勢典子(こせ のりこ)の「I Miss You」です。
日本人同士のサンプリング。海外のレコードを掘るだけが能じゃない、というNujabesの引き出しの広さが出た1曲で、この曲は後にクラムボンにカバーされるなど、日本の音楽シーンの中でも長く愛されています。
巨勢典子 - I Miss You
Nujabes / Ordinary Joe feat. Terry Callier
続いては、「本家共演」という珍しい形の1曲を。
Nujabes - Ordinary Joe feat. Terry Callier
Terry Callier - Ordinary Joe
元ネタは、Terry Callier(テリー・キャリアー)の「Ordinary Joe」。そしてNujabes版では、なんと元ネタ本人のTerry Callierが参加して、自分の曲を歌い直しているんです。
サンプリングなのか、カバーなのか、その境界が溶けていくような組み合わせ。元の歌手へのリスペクトが、共演という形になった好例だと思います。
Terry Callier - Ordinary Joe
Nujabes / Lady Brown feat. Cise Starr
ここからは1stアルバム『Metaphorical Music』から2曲。まずはボサノヴァの香りが濃い1曲を。
Nujabes - Lady Brown feat. Cise Starr
Luiz Bonfá - The Shade Of The Mango Tree
元ネタは、ボサノヴァのギタリストLuiz Bonfá(ルイス・ボンファ)の「The Shade Of The Mango Tree」です。
ボンファのギターの音色が、そのまま曲の顔になっているタイプの使い方。Nujabesのブラジル音楽への愛は、Luv(sic)のIvan Linsと合わせて読むと、ひとつの明確な軸として見えてきます。
Luiz Bonfá - The Shade Of The Mango Tree
Nujabes / Horn In The Middle
同じく『Metaphorical Music』から、ジャズの巨人を直球で使った1曲を。
Nujabes - Horn In The Middle
Miles Davis - Joshua
元ネタは、Miles Davis(マイルス・デイビス)の「Joshua」です。
ジャズの帝王のホーンが、どうビートに生まれ変わるか。タイトルどおり「真ん中のホーン」に耳を澄ませて聴き比べると、Nujabesの編集の手つきがよく分かるはずです。
Miles Davis - Joshua
Nujabes / Latitude -remix feat. Five Deez
最後は、ジャズでもブラジルでもない、意外な引き出しから。
Nujabes - Latitude -remix feat. Five Deez
To Rococo Rot - Die Dinge des Lebens
元ネタは、ドイツのポストロック/エレクトロニカバンドTo Rococo Rotの「Die Dinge des Lebens」です。
シンシナティのFive Deezを迎えたこの曲の土台が、ドイツの電子音楽。レコード店を営んでいたNujabesの耳は、ジャンルの国境を軽々と越えていたんだなと実感する組み合わせですね。
To Rococo Rot - Die Dinge des Lebens
最後に
今回のNujabesの元ネタは、Ivan Lins、Yusef Lateef、巨勢典子、Terry Callier、Luiz Bonfá、Miles Davis、To Rococo Rotという布陣でした。
ソウルやファンクが中心だったこれまでの回とは対照的に、ジャズとブラジル音楽が背骨。それでいて巨勢典子やTo Rococo Rotのような意外な引き出しもある。この幅の広さと一貫性が、没後15年以上経っても世界中で聴かれ続ける理由なんだと思います。
ネタ帳には「The Final View」(Yusef Lateef)や「Flowers」(John Hicks)など、まだ良い組み合わせが残っているので、Nujabes編もいずれ後編をやりたいところです。そしてLuv(sic)シリーズの全体像は、Shing02の回で改めて掘り下げますね。
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!