いとうせいこうは、日本のラッパー、作家、クリエーター。1985年にプロデュース作『業界くん物語』、1986年にいとうせいこう & TINNIE PUNX名義のアルバム『建設的』を発表し、日本語ラップの起点を作った先駆者として知られる。作家としても処女小説『ノーライフキング』(1988年)、東日本大震災を題材にした『想像ラジオ』(2013年)などの代表作を持ち、テレビ朝日『フリースタイルダンジョン』では審査員を務めた。現在は□□□(クチロロ)、DUBFORCE、いとうせいこう is the poetなど複数のユニットで音楽活動を続けている。
基本データ
| アーティスト名 | いとうせいこう |
|---|---|
| 生年月日 | 1961年3月19日 |
| 出身地 | 東京都葛飾区 |
| 職業 | ラッパー、作家、編集者、作詞家、俳優 |
| 活動開始 | 1985年 |
| デビュー作 | 1986年、アルバム『建設的』(いとうせいこう & TINNIE PUNX名義) |
| 参加ユニット | □□□(クチロロ)、DUBFORCE、いとうせいこう is the poet、SUBLIMINAL CALM ほか |
| 所属 | キューブ |
| 公式サイト | WATCH SEIKO |
来歴
東京都葛飾区鎌倉町出身。早稲田大学法学部を卒業後、1984年に講談社へ入社し、雑誌『ホットドッグ・プレス』の編集部で投稿コーナーを担当した。在学中からピン芸人や舞台の活動も行っていたという。1985年、アーティスト・プロデューサーとして初めて手がけたオムニバスアルバム『業界くん物語』を発表。ヤン富田、藤原ヒロシ、DJ K.U.D.O.、Dub Master X、屋敷豪太ら、のちの日本語ラップ/クラブシーンを担う面々が集まった作品だった。
1986年に講談社を退社。同年、いとうせいこう & TINNIE PUNXとして、ヤン富田のプロデュースによるアルバム『建設的』を発売した。「東京ブロンクス」をはじめ、日本語をそのままラップに乗せる実験的な楽曲群は、日本語ラップ最初期の金字塔として今なお語り継がれている。1987年にはシングル「BODY BLOW」「渚のアンラッキーボーイズ」を発表。1988年には処女小説『ノーライフキング』を刊行し、第2回三島由紀夫賞と第10回野間文芸新人賞の候補となった。1989年にはヤン富田プロデュースの初ソロ・アルバム『MESS/AGE』を発表している。
1992年には藤原ヒロシとSUBLIMINAL CALMを結成してアルバム『SUBLIMINAL CALM』を発表し、ソロ・アルバム『OLEDESM』もリリースした。1999年にはエッセイ『ボタニカル・ライフ 植物生活』で第15回講談社エッセイ賞を受賞。2008年にキューブへ所属し、いとうせいこう & POMERANIANS≡として『カザアナ』を発表した。2009年にはDub Master X、かせきさいだぁ≡らとTHE DUB FLOWERを結成し、□□□(クチロロ)にも加入。2013年には小説『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞を受賞した。
2015年から2020年にかけては、テレビ朝日系のMCバトル番組『フリースタイルダンジョン』に審査員として出演し、バトルブームの一翼を担った。2016年にはダブバンドDUBFORCEへ正式加入。同年、『建設的』の発売30周年を記念したトリビュート・アルバム『再建設的』が発表され、スチャダラパー、RHYMESTER、レキシ、岡村靖幸らが参加した。東京体育館では「いとうせいこうフェス ~デビューアルバム『建設的』30周年祝賀会~」が開催され、RHYMESTERの宇多丸は『建設的』との出会いについて「あの人がいなければ俺らラップやってない」と語った。2018年にはERONE、KEN THE 390とのコラボレーション・シングル「THE JUDGE」を配信し、DUBFORCEから派生したダブ・ポエトリー・ユニット「いとうせいこう is the poet」の活動を開始。2021年には同ユニットの1stアルバム『ITP 1』を発表した。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1984年 | 早稲田大学法学部を卒業し、講談社に入社。『ホットドッグ・プレス』編集部に配属 |
| 1985年 | プロデュース作オムニバス『業界くん物語』を発売 |
| 1986年 | 講談社を退社。いとうせいこう & TINNIE PUNXとしてアルバム『建設的』を発売 |
| 1988年 | 処女小説『ノーライフキング』を刊行 |
| 1989年 | 初ソロ・アルバム『MESS/AGE』発売 |
| 1992年 | 藤原ヒロシとSUBLIMINAL CALMを結成。アルバム『SUBLIMINAL CALM』とソロ『OLEDESM』を発売 |
| 1999年 | 『ボタニカル・ライフ 植物生活』で講談社エッセイ賞を受賞 |
| 2008年 | キューブに所属。いとうせいこう & POMERANIANS≡『カザアナ』発売 |
| 2009年 | THE DUB FLOWERを結成。□□□(クチロロ)に加入 |
| 2013年 | 小説『想像ラジオ』で野間文芸新人賞を受賞 |
| 2015年 | テレビ朝日『フリースタイルダンジョン』の審査員に就任(2020年まで) |
| 2016年 | DUBFORCEに正式加入。トリビュート・アルバム『再建設的』発売、「いとうせいこうフェス」を東京体育館で開催 |
| 2018年 | ERONE、KEN THE 390との「THE JUDGE」を配信。いとうせいこう is the poetの活動を開始 |
| 2021年 | いとうせいこう is the poetの1stアルバム『ITP 1』発売 |
音楽性
いとうせいこうのラップは、日本語の語感や言葉遊びそのものをリズムにしていく実験性に特徴がある。アメリカのヒップホップのフォームを借りながらも、落語や漫談、演劇に通じる「話芸」としての日本語の呼吸を持ち込み、『建設的』ではヤン富田のプロデュースによるニューウェーブ色の強いサウンドと融合させた。ユーモアと批評性を同居させたリリックは、MCU、スチャダラパー、宇多丸(RHYMESTER)ら後続のMCたちに大きな影響を与えたと語られている。
作家としての言葉の扱いは音楽にも通底しており、後年のいとうせいこう is the poetでは、小説や詩の一節を即興のダブ演奏に乗せて読み、エコーなどのダブ処理で音と言葉を拮抗させる「ダブ・ポエトリー」に行き着いた。ラップ、朗読、ダブを行き来する表現は、日本語の「声の音楽」の可能性を40年にわたって探り続けた軌跡でもある。
ディスコグラフィ
※本記事のApple Musicリンクはアフィリエイトリンクです。
| リリース日 | タイトル | 種別 |
|---|---|---|
| 1985年12月21日 | 業界くん物語 | プロデュース・オムニバスアルバム(V.A.) |
| 1986年9月21日 | 建設的 | アルバム(いとうせいこう & TINNIE PUNX 名義) |
| 1987年4月21日 | BODY BLOW | シングル(12インチ) |
| 1989年7月25日 | MESS/AGE | ソロ・アルバム(Apple Musicでの配信なし) |
| 1992年2月21日 | SUBLIMINAL CALM | コラボレーションアルバム(SUBLIMINAL CALM 名義) |
| 1992年5月21日 | OLEDESM | アルバム |
| 2008年5月21日 | カザアナ | コラボレーションアルバム(いとうせいこう & POMERANIANS≡ 名義) |
| 2016年9月21日 | 再建設的 | トリビュート・アルバム(いとうせいこう & リビルダーズ 名義) |
| 2018年1月19日 | THE JUDGE | コラボレーション・シングル(ERONE、KEN THE 390との共作) |
| 2021年3月3日 | ITP 1 | アルバム(いとうせいこう is the poet 名義) |
代表曲
東京ブロンクス
『建設的』(1986年)収録。東京を「ブロンクス」に見立てた、日本語ラップの金字塔と呼ばれる一曲。2016年のトリビュート盤『再建設的』では、いとう本人とヤン富田によるセルフカバー「スイート・オブ・東京ブロンクス」が収録された。
BODY BLOW
1987年に12インチシングルとして発売され、日本テレビ系『ハイブリッド・チャイルド』のテーマ曲にもなった初期の代表曲。『建設的』にも収録され、『再建設的』ではMCUがカバーした。
マイク一本
ソロ・アルバム『MESS/AGE』(1989年)収録。マイク一本で勝負するMCの矜持を歌った楽曲で、後にMCUが「マイク二本 feat. MAC THE SEIKO」としてカバーしたことでも知られる。収録アルバム『MESS/AGE』はApple Musicで配信されていない。
かすかなしるし
SUBLIMINAL CALM(1992年)収録。藤原ヒロシとのユニットによる浮遊感のある一曲で、後に須永辰緒によってカバーされた。
THE JUDGE
2018年発表。ERONE、KEN THE 390とのコラボレーション・シングル。『フリースタイルダンジョン』で審査員を務めたいとうが、現役のバトルMCたちとマイクリレーを繰り広げた一曲。
直して次に渡す
いとうせいこう is the poetの楽曲。2019年に限定アナログ盤で初音源化され、アルバム『ITP 1』(2021年)にも収録された。壊れたものを直して次へ渡すというモチーフを、ダブ処理された即興演奏と朗読で反復する、ダブ・ポエトリーの代表作。
今後のライブ
2026年12月については、確認日時点でいとうせいこう本人および参加ユニット(DUBFORCE、いとうせいこう is the poetなど)の公演予定は発表を確認できていない。新しい発表があり次第、本欄を更新する。
出典・確認日
- ORICON NEWS(いとうせいこう プロフィール/『建設的』『再建設的』『ITP 1』作品情報/いとうせいこうフェス開催報)
- OTOTOY『再建設的』特集(2016年)
- CINRA(いとうせいこう is the poet インタビュー、2019年)
- Apple Music(各作品ページ)
- キューブ公式サイト(所属情報)
- Wikipedia「いとうせいこう」「再建設的」(補助資料)
確認日:2026年11月2日
