HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
まずは最近聴き始めた人のためにサンプリングとは何かを簡単におさらいしましょう。
既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。
-サンプリング wikipediaより引用
要するに"過去の名曲のエッセンスを継承し、新しい音楽として蘇らせる"魔法のような手法ですね。
「パクリじゃないの?」なんて野暮なことは言わせません。そこには元の作品への強烈な"リスペクト"と、それをどう調理するかという"センス"が問われる、HIPHOPの根幹をなすアートフォームなんです。
この記事では、さまざまなアーティストの「元ネタ(サンプリングソース)」を探っていきます。
「この渋いベース、実は70年代のソウルだったのか!」とか「このフレーズ、あの大ネタと同じじゃん!」といった発見は、音楽を聴く楽しさを何倍にもしてくれます。
ってことで、第13回目は伝説のユニット、キエるマキュウの元ネタを探っていきましょう!
MAKI THE MAGICの魔法のようなサンプリング・センス、CQの変幻自在なフロウ、そしてILLICIT TSUBOIの破壊的なサウンドエンジニアリング。
彼らの音楽は「アングラ」という言葉が誰よりも似合いますが、同時にとてつもなくキャッチーでもあります。MAKI THE MAGICが天国へ旅立った今もなお、そのレコード愛とビートの輝きは色褪せません。今回はその「魔法の種明かし」を少しだけ覗いてみましょう。
キエるマキュウの曲を元ネタと比較してみましょう
キエるマキュウ / FIGHT BACK feat. GORE-TEX
NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDからGORE-TEXを迎えた、マキュウ史上最も暴力的でハードコアな一曲。「さあ始まりだ」の掛け声とともに、怒涛のマイクリレーが展開されます。ライブでこの曲がかかった時の爆発力は凄まじいものがあります。
【元ネタ】Rhythm Heritage - Theme from S.W.A.T.
元ネタは、70年代の刑事ドラマ『S.W.A.T.(特別狙撃隊S.W.A.T.)』のテーマ曲!日本でも「川口浩探検隊」のテーマとして有名すぎるあの曲です。
原曲はファンキーで疾走感のあるディスコ・ファンクですが、MAKI THE MAGICはこれをザラザラの質感でサンプリングし、不穏さをブーストさせています。「正義の味方のテーマ」を「悪党(ILLなラッパー)のアンセム」に変えてしまうセンス。これぞヒップホップです。
キエるマキュウ / ナゼナラ
マキュウの代表曲の一つ。独特の間と、意味深でナンセンスなリリックが絡み合う、中毒性の高い楽曲です。「ナゼナラ…」と繰り返されるフレーズが頭から離れなくなります。
【元ネタ】Bobby Hutcherson - Rain Every Thursday
バックで流れる美しくもミステリアスなヴィブラフォンの音色。元ネタはジャズ・ヴィブラフォン奏者の巨匠、Bobby Hutcherson(ボビー・ハッチャーソン)の名曲です。
1971年のアルバム『Happenings』などは有名ですが、この曲が持つ「雨の日の憂鬱」と「都会の冷たさ」が混ざったような空気感を見事に抽出しています。CQとMAKI THE MAGICのラップが乗ることで、ハードボイルドな探偵映画のような雰囲気が生まれています。
キエるマキュウ / Meteor
多くのファンが「一番好き」に挙げる、エモーショナルな名曲『Meteor』。普段はふざけているようで、時折見せるこの切なさこそマキュウの真骨頂。「流れ星」のように儚い人生や時間を歌ったリリックが胸に刺さります。
【元ネタ】Love Unlimited - I Can't Let Him Down
この泣きのトラックの正体は、ソウル界の帝王Barry White(バリー・ホワイト)がプロデュースした女性ボーカルグループ、Love Unlimited(ラヴ・アンリミテッド)のバラードです。
イントロのストリングスの広がりと、切ないピアノの旋律。ドラマチックなソウル・ミュージックのお手本のような曲です。この壮大な愛の歌を、哀愁漂うヒップホップ・ビートに昇華させる手腕は、まさにMAKI THE MAGICの真骨頂と言えるでしょう。
キエるマキュウ / Hakoniwa
インストゥルメンタル曲としても評価が高い、ドープでダークな一曲。重たいベースラインと、不気味な上ネタがループする、地下室の匂いがするようなトラックです。
【元ネタ】Placebo - Humpty Dumpty
元ネタは、ベルギーのジャズ・ロック・バンド、Placebo(プラシーボ)の「Humpty Dumpty」。
このバンド、実はJ DillaやMadlibといった世界最高峰のビートメイカーたちもこぞってサンプリングしている「大ネタ」の宝庫なんです。うねるようなベースラインと、ジャズ・ファンク特有の怪しいグルーヴ。MAKI THE MAGICがいかに世界基準の「耳」を持っていたかが分かります。
キエるマキュウ / Do The Handsome Feat. KASHI DA HANDSOME
最後は、東京のヒップホップ・シーンきっての伊達男、KASHI DA HANDSOMEを迎えたパーティー・チューン!泥臭いけれど、どこか華やかで、男たちが肩を組んで歌っているような楽しさがあります。
https://youtu.be/LsOTYN1uvtw?si=VHzltpiSf5llil5o
【元ネタ】The O'Jays & The Moments - Meeting You Was No Mistake
元ネタは、ソウル・グループのビッグネーム同士、The O'Jays(オージェイズ)とThe Moments(モーメンツ)が共演した楽曲です。
タイトルを訳すと「君に出会ったのは間違いじゃなかった」。最高にロマンチックでスウィートなソウル・ナンバーです。この曲の持つ「男のロマン」や「哀愁」を、そのままマキュウ流のハンサムな美学に変換しています。サンプリングのループが本当に気持ちいい!
最後に
今回はキエるマキュウの元ネタを探っていきました!いかがでしたでしょうか?
刑事ドラマのテーマ曲から、ベルギーのジャズ・ロック、そして極上のスウィート・ソウルまで。
MAKI THE MAGICのレコードバッグの中身は、まさに「魔界」に通じるような奥深さがあります。
どの曲も、原曲の良さを最大限に活かしつつ、しっかりと「マキュウ印」の埃っぽい音に仕上がっているのが流石です。
R.I.P. MAKI THE MAGIC。彼の残したビートと、その元ネタたちは、これからも僕らを踊らせ続けてくれるでしょう。
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!