【元ネタ探求】韻の守護者「ICE BAHN」の渋すぎるサンプリング美学を掘る!
こんにちは!今日は日本のヒップホップシーンにおいて、独自の立ち位置と圧倒的な「韻」の強度でリスペクトを集め続けるグループ、ICE BAHN(アイスバーン)について語らせてください。
神奈川・相模原をレペゼンし、FORK、JADE、KIT(そしてバックを支えるBEAT奉行)からなるこの集団。フリースタイルダンジョン等でのFORKの活躍で知った方も多いかもしれませんが、彼らの真骨頂はやはり音源にあります。
徹底的に「脚韻」にこだわる硬派なスタイル。その重厚なライムを支えているのは、90年代の空気感を色濃く残した、太くて渋いビートです。今回は、聴けば思わず首を振ってしまうICE BAHNの名曲たちと、そのセンス抜群な「サンプリング元ネタ(Original Sample)」を紹介していきます。ブーンバップ好き、JAZZやSOUL好きは必見です!
ICE BAHNの曲を元ネタと比較してみましょう
越冬
まずはこの曲を紹介しないわけにはいきません。ICE BAHNの代表曲にして、日本語ラップ界のクラシック『越冬』です。
タイトル通り、冬(不遇の時代や厳しい現実)を耐え忍び、いつか来る春(成功)を虎視眈々と狙う男たちの決意表明。「負けた数だけ記事になる」といったパンチラインの数々に、心を震わせたヘッズは多いはず。
イントロの冷たくも美しいピアノが流れた瞬間、ライブ会場の空気が一瞬でピンと張り詰める。哀愁と闘争心が同居した名曲です。
【元ネタ】Bob James - Love Lips
この曲の元ネタは、フュージョン/ジャズ界の巨匠 Bob James(ボブ・ジェームス) が1979年にリリースしたアルバム『Lucky Seven』収録の「Love Lips」です。
Bob Jamesといえば、HIPHOP界で「最もサンプリングされたアーティストの一人」と言われる重要人物。「Nautilus」や「Mardi Gras」などはB-BOYなら一度は聴いたことがあるはず。
原曲はエレピ(ローズ・ピアノ)の旋律が際立つ、非常に都会的でメロウなフュージョン・ナンバーです。ICE BAHNの『越冬』では、この美しい旋律のピッチ(音程)をグッと落とす(スローダウンさせる)手法が取られています。
原曲が持つ「暖かみ」や「リラックス感」を、ピッチを変えることで「冬の寒さ」や「厳しさ」、そしてその裏にある「哀愁」へと変換してしまう。まさにサンプリング・マジックといえるでしょう。
LEGACY
続いては、自分たちが積み上げてきた歴史と誇りを歌う『LEGACY』。
重たく響くベースラインと、鋭く切り込んでくるホーンセクション。チャラついた要素は一切なし。首を縦に振らざるを得ない、ドープで硬派なヒップホップそのものです。MVでの彼らの立ち振る舞いからも、ベテランならではの風格が漂っています。
https://www.youtube.com/results?search_query=ICE+BAHN+LEGACY
(※公式MV等の埋め込みが見当たらないため、検索結果等のリンクをご参照ください)
【元ネタ】Billy Paul - Am I Black Enough for You?
この骨太なトラックの元ネタは、70年代のフィラデルフィア・ソウル(フィリー・ソウル)を代表するシンガー、Billy Paul(ビリー・ポール)の「Am I Black Enough for You?」です。
Billy Paulといえば全米No.1ヒットの「Me and Mrs. Jones」が有名ですが、HIPHOP的には断然こっち。1972年のアルバム『360 Degrees of Billy Paul』に収録されています。
タイトルからして強烈ですよね。「俺は(お前にとって)十分に黒いか?」と問いかけるこの曲は、当時のブラック・パワー・ムーブメントの影響を色濃く反映したファンク・チューン。
この曲が持つ「黒さ」や「闘争心」を感じるグルーヴが、そのままICE BAHNの「誰になんと言われようと自分たちのスタイルを貫く」というスタンスと共鳴しています。Schoolly Dなど、多くのハードコア・ラッパーにも愛されたネタです。
LOYALTY
3曲目は、仲間やHIPHOP文化への忠誠を誓う『LOYALTY』。
90年代の東海岸ヒップホップ(ブーンバップ)を彷彿とさせる、ザラついた質感と太いドラムが特徴です。「男気」という言葉がこれほど似合う曲もありません。リリックの一言一句が重く、現場で叩き上げてきた彼らだからこそ説得力を持つ一曲。
【元ネタ】Otis Redding - Rock Me Baby
サンプリングされているのは、伝説のソウルシンガー、Otis Redding(オーティス・レディング)によるブルース・スタンダードのカバー「Rock Me Baby」です。
オーティスは「キング・オブ・ソウル」と称され、アレサ・フランクリンの「Respect」の作曲者としても有名ですね。この曲は、彼の死後1968年にリリースされたアルバム『Otis Blue』などに収録されています。
聴きどころは、泥臭いギターのリフと、魂を削るような歌声。この「生の熱量」こそがポイント。洗練されすぎない、土埃が舞うようなサザン・ソウル/ブルースの空気感が、ICE BAHNの武骨なスタイルと抜群の相性を見せています。
Jay-Zをはじめ、多くのラッパーがオーティスの声をサンプリングしてきましたが、このギターリフの使い方はシンプルながら一番アガるやつです。
JACK HAMMER
最後は、ライブでの鉄板曲『JACK HAMMER』!
BPM(テンポ)が速めで、タイトル通り「削岩機(ジャックハンマー)」のごとく、ものすごい勢いで言葉を畳み掛けるマイクリレーが圧巻のアッパーチューンです。FORKの韻の連打もさることながら、メンバー全員のスキルの高さが堪能できます。
【元ネタ】Julie Driscoll, Brian Auger & The Trinity - Indian Rope Man
元ネタは、60年代後半のイギリスで活躍したサイケデリック/ジャズ・ロック・バンド、Julie Driscoll, Brian Auger & The Trinityによる「Indian Rope Man」です。
実はこの曲、HIPHOP界では知る人ぞ知る「大ネタ」。
90年代最強のディガー集団D.I.T.C.のメンバー、Lord Finesse(ロード・フィネス)の名曲「Strictly For The Ladies」や、Kanye Westなどもサンプリングに使用しています。
荒ぶるハモンドオルガンの音色と、疾走するドラムブレイク!このスピード感こそが、ラッパーたちのエンジンを全開にさせる燃料になっています。
ロックとジャズが融合したこの熱いエナジー、原曲を通して聴くと後半のオルガンソロとかめちゃくちゃカッコいいので必聴です。
最後に
今回はICE BAHNの元ネタを探っていきました!いかがでしたでしょうか?
こうして並べてみると、彼らがいかに「ソウル、ジャズ、ファンク、ブルース」といったブラックミュージックの根幹(ルーツ)を深くリスペクトしているかが分かりますよね。
ただ古い曲を使っているだけでなく、原曲が持つ「熱さ」や「哀愁」を自分たちのリリックの世界観に見事に落とし込んでいる。
「韻」ばかりに注目されがちなICE BAHNですが、ビート選び(=サンプリングのセンス)も超一流なんです。
ではまた次の元ネタを探せ!でお会いしましょう!