【日本語ラップ】ZORNのおすすめ曲5選

ラッパー ZORN=人間 ZORN

ZORN(ゾーン)というラッパーをご存じですか?

現在のシーンでは中堅どころの年齢である1989年生まれのZORNは、MACHHOやKREVAなど大物ラッパーに一目置かれ、コラボもこなす現シーンのエースともいえる存在です。

そんな順風満帆に見える彼は、幼少期に壮絶な経験をしており、それが彼のラップを形作る最も大きな要素になったと思わせる生活感や人生観に溢れたラップを特長としています。

その彼の経験とは、両親の離婚や母親のネグレクトと薬物、日常生活や団らんとは無縁の幼少期、少年期だったというものです。

報われる場も育まれるものの、愛しまれることもなく育った彼は、必然のように悪に道に走り、高校中退の後に逮捕、少年院で2年間過ごしていたそうです。そこで行われた作文コンテストでは、文中で巧みに韻を踏みながら自らを語り、最優秀賞を受賞、ひとつの転機となります。

その発表の場で同席した母親の涙を見たことで、彼の心の中で何かが生まれたのかもしれません。

少年院出所後は、フリースタイルバトルを中心にラップの腕を磨きながら、父親と叔父が営む塗装会社でコーキング職人として働き、ラッパーとの二足の草鞋を経験。19歳の時にはアルバムをリリースし、キャリアを重ねます。

職人業は、かなり人気が出てからもライフワークとして続けていたそうで、そうした生活者としての生々しい視点がZORNのラップを彩っているのです。

だからでしょうか。一見HIP HOP都は真逆のすっと心に染み込んでくる素朴さやストレートさ、人間らしさが、彼のラップを圧倒的に輝かせているように感じます。

ラッパー・ZORN=人間・ZORN、そんな彼のおすすめの曲、行ってみましょう。

ZORN おすすめの曲5選

My life [Pro. DJ OKAWARI / Dir. 飛沫]

一曲目はZORNの日常がぎっしり詰まった「My life」です。

職人として朝6時からスタートする生活。支度をして現場まで車を走らせ、仕事をこなして一服、また仕事をしながら感じる今や未来への想い、そんなときふと気がつく夕日の美しさ、変化のない毎日の中にこそ輝いている家族への愛情や感謝、そんな自分への誇りをストレートに歌っていますね。

何はともあれ一人ではない人生を歩めることの幸せを、子どもの頃には感じられなかった団らんを噛みしめる一人の男への哀愁が漂います。

「洗濯物干すのもHIP HOP」、これほどまでに生活感や日常感に溢れたパンチラインはほかにはないでしょう。生きていることに能動的に輝きを見出していくZORNならではのラップが沁みます。

家庭の事情

この曲を聴けばZORNの生い立ちの壮絶さがわかります。

「コンビニ弁当がおふくろの味」「幼稚園の鞄から注射器」「知らねぇホストが寝てた自分ち」「転がる錠剤と愛の残骸」、故に「一家団欒に憧れた」「死ぬほど憎んだ家庭の事情」、そんな人生です。

そのような現実から逃れるように非行に走り、逮捕や少年院という現実を振り返ったとき、ZORNは「家族、生きる意味」を知ったのではないでしょうか。

このような経験をして、最終的に両親に対して温かい言葉をラップにできるZORNの人間力には敬服します。

Chill Out feat.AKLO

続いては、オシャレなトラックにZORN節を乗せた「Chill Out」。

複雑な過去や悲しみ、苦しみを経験してきたZORNが、自分を信じて前に進み続けることができる理由をラップに落としたようなこのリリックが印象的です。

MVでは、AKLOと焚火を囲んでキャンプで語らうような映像も見られますが、AKLOとの出会いもZORNの血肉になっているのでしょう。AKLOとは共にツアーに回るほか、数多くのコラボを展開、楽曲を思いつくとAKLOに連絡してデモにしてもらう、といった公私に渡る深い関係性を築いてているようですね。

妻、娘、ホーミー(地元の仲間)、AKLOや多くのラッパー仲間に囲まれたZORNの人生に幸あれ、と思います。

Rep feat. MACCHO

ここまで紹介してきたように、強烈な人間力で独自のラップを生み出してきたZORN。

その実力と人間性は届くところに届くのですね。ラップ界では超大物のMACCHOとのコラボは、風格漂うビッグチューンとなりました。この曲に関しては、四の五の言うより聴き込んでいただきたい一曲です。そしてこの縁から、MACCHOとKREVAが共演する「Player’s Player」を実現させたZORN。シーンにおけるこの功績は、計り知れません。

Letter

ZORNを語るうえで避けては通れないのが、彼の愛する娘たちです。

実は、奥様の連れ子であり血の繋がりはありませんが、彼は、本当の父親のように深く娘を愛する想いに溢れてきます。ここにしたためられた娘への想いは、本物の父親でしかありません。

「あとどのくらい手をつなげる」、娘を愛する父親なら誰しもが心の底から感じる父としての想いです。そんな想いがぎっしりと詰まったこの曲は、家族のいる方、子どものいる方にぜひ聴く欲しい一曲です。こんに子どもを愛せるZORN、きっとこんな風に愛してほしかったのではないでしょうか。そう思うと、少し悲しい曲でもあるのです。

これを聴く全ての人が幸せであれば、何よりですね。

Walk This Way feat.AKLO

最後は、「Walk This Way」。この曲にはZORNの決意が溢れています。

ラッパー、職人、夫、二児の父親、決して裕福でも恵まれてもいないけれど、この道を歩くことをあきらめない、この道から逃げない、俺は今の俺でずっと戦っていく、そんなZORNの想いが溢れたこの曲。

今をしっかりと受け止めて、自分で考え、自分で動いて、自分で道を切り開いていく、実は超ポジティブなリリックを、日常感あふれるZORN節でより身近にラップしている「らしさ」が輝いていますね。

彼は自分自身に向けて歌ったのかもしれませんが、毎日を同じサイクルで生きていく生活者や労働者へのエールソングともなるこの曲は、多くの人間の真理でもあります。

この曲があれば何とか生きていけるかも、そんな気持ちにさえさせてくれる「Walk This Way」、全力でおすすめします。

まとめ

人間らしさに溢れたZORN、いかがでしたか?

売れてからもしばらくは職人業を続けていたことは、家族や娘への愛情であり、守りたいという責任感そのものだったのではないか、個人的にはそう思います。

そんな人間としての生々しくも美しい生き様を見せてくれるZORNのラップは、幼少のころに感じてきた悲しみを、家族を得てようやく癒すことができた「愛と感謝」が根底にあるのです。自らの悲しみや苦しみを生きる力に変え、それを人が生きる力に変換してくれるZORNは、ラップやHIP HOPとしてだけでなく、音楽として多くの人に聴いてほしいと思います。

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