HIPHOPはサンプリングのカルチャーだとよく言われますよね!
既存の音源から一部を引用し、再構築することで新しい音楽を生み出す手法。
「この曲、どこかで聴いたことあるな?」と思って調べたら、意外な名曲が使われていた時の感動は、ヒップホップファンの醍醐味のひとつです。
今回は、徳島から彗星のごとく現れ、今やシーンの中心人物となったラッパー・Watson(ワトソン)の元ネタを探っていきましょう!
独自のワードセンスと、とぼけたユーモア、そしてハングリーさが同居する彼のスタイル。
それを支えるビートには、AORからシティポップ、R&Bまで、実は色彩豊かな「ネタ」が隠されているんです。
それでは、Watsonの名曲たちを彩るサンプリングソースを紐解いていきましょう!
ペンとノート / Watson
2023年にリリースされたアルバム『Soul Quake』の1曲目を飾る、Watsonのキャリアにおける重要曲です。
「金がないからペンとノート」というフックは、彼が何も持たざる者からラップ一つで成り上がろうとする決意表明そのもの。
プロデュースはお馴染みの盟友・Koshy。彼のビートメイクの手腕が遺憾なく発揮されており、切なくも美しいピアノのループが、Watsonの切実なリリックをよりドラマチックに演出しています。
Watson - ペンとノート
元ネタ:Bobby Caldwell – Heart of Mine (1988)
「ミスターAOR」ことボビー・コールドウェルが1988年に発表したアルバム『Heart of Mine』のタイトルトラックです。
ボビー・コールドウェルといえば「What You Won't Do for Love(風のシルエット)」がサンプリングのド定番ですが、あえてこちらのバラードを持ってくるセンスが素晴らしいですよね。
原曲の持つ都会的で洗練された大人の哀愁(メロウネス)を、ピッチをいじってループさせることで、徳島の路上から世界を見据える少年の「ブルース」に見事に変換しています。
BOBBY CALDWELL - Heart of Mine
Alright / Watson
「ハリポッター」「AMG」といったパンチラインが飛び交う、中毒性抜群のこの曲。
MVで見せるコミカルな動きや、耳に残る独特のフロウで話題になりましたが、トラックのかっこよさも異常ですよね。
どこか懐かしさを感じる煌びやかなストリングスとボーカルのカットアップ。
実はこれ、日本の昭和歌謡(シティポップ)が元ネタなんです。
Watson - Alright
元ネタ:八神純子 – 想い出のスクリーン
「みずいろの雨」や「パープルタウン」で知られる実力派シンガー、八神純子の名曲です。
近年、海外のフューチャー・ファンクやヴェイパーウェイヴの流れで再評価著しい日本のシティポップですが、この曲のサビの直前やアウトロの美味しい部分を大胆にサンプリングしています。
昭和の歌謡曲が持つ湿り気のあるメロディが、トラップのビートに乗ることで、不思議と「今っぽい」高揚感に変わる。
Watsonの「Alright」というポジティブな響きと、原曲の切なさが混ざり合って、唯一無二のグルーヴを生んでいます。
八神純子 - 想い出のスクリーン
Fashion Week feat. Benjazzy / Watson
解散を発表したBAD HOPから、随一のスキルを持つBenjazzyを迎えた強力な一曲。
お互いにタイトなラップをスピットするこの曲は、緊張感が半端ないですよね。
Benjazzyの機関銃のようなフロウと、Watsonの脱力しつつも芯のあるフロウ。この対比を支えているビートは、これまでのメロウな路線とは一味違います。
Watson - Fashion Week (feat. Benjazzy)
元ネタ:Lost Astronaut – Quiver
この曲の元ネタは、歌モノではなく、エレクトロニカやアンビエントの要素を持つインストゥルメンタル楽曲です。
浮遊感があり、どこか無機質で冷たい印象のシンセサイザーの音が、楽曲全体に漂う「ヒリついた空気感」を醸成しています。
R&Bやソウルだけでなく、こうした電子音楽のマイナーなトラックからもサンプリングしてくるあたり、プロデューサーの引き出しの多さに驚かされます。
Lost Astronaut - Quiver
小リッチ Feat. C.O.S.A. & Jin Dogg / Watson
名古屋の重戦車 C.O.S.A. と、大阪の狂犬 Jin Dogg。
それぞれのエリアを背負う強烈なラッパー二人を迎えた「小リッチ」。
「大金持ち」ではなく「小リッチ」と歌うところがWatsonらしいユーモアですが、客演の二人が入ることで曲の強度はMAXに。
特にJin Doggのバースの爆発力は必聴ですが、それを支えるトラックは意外にも超スウィートなR&Bなんです。
Watson - 小リッチ Feat. C.O.S.A. & Jin Dogg
元ネタ:Elisha La’verne – YOUR LOVE SENDS ME
90年代〜00年代初頭に日本でも大ヒットしたUK R&Bの歌姫、エリーシャ・ラヴァーン。
実はこの曲、安室奈美恵やCrystal Kayなどを手掛けた日本人プロデューサー、T.Kura氏がプロデュースした曲でもあります。
ギターのカッティングが心地よいこの極上のスムースR&Bを、ドリルやトラップ以降の重たいベースで再構築。
甘いネタにハードなラップを乗せるという、ヒップホップの王道マナーを感じさせる一曲です。
Elisha La’verne - YOUR LOVE SENDS ME
最後に
Watsonといえば、その独特なリリックやキャラクターに注目が集まりがちですが、トラック選びのセンスも抜群ですよね!
AORから日本の歌謡曲、そしてUK R&Bまで。
ジャンルレスに「良いメロディ」を貪欲に取り入れ、それを現代のビートに昇華させる手腕は、まさにヒップホップそのもの。
元ネタを知ってから聴き直すと、「この一瞬のフレーズをループさせてるのか!」といった発見があって、より楽曲が好きになるはずです。
また機会があれば、他の楽曲の元ネタも探っていこうと思いますので、お楽しみに!
ではまた次回お会いしましょう!!