Anarchy(アナーキー)とは英語で「無秩序」という意味です。
今日は、そんな強烈な名前を持ったラッパー、Anarchyをご紹介します。
Anarchyは、元暴走族総長にして、京都に一大暴走族連合を作り上げたカリスマ性のあるラッパーです。しかも、暴走族に入隊して連合を作り上げるまでに要した期間はわずか1年。
Anarchyの強烈なカリスマ性や圧倒的な存在感はどこからくるのか、そんなAnarchyがどんなラップを繰り出すのか、早速見ていきましょう。
まずは、Anarchyの経歴から。彼は1981年大阪生まれ京都育ちの41歳。幼少期に父母が離婚し、ロック好きだった父に育てられます。ロック思想の強い父は、Anarchyがケンカに勝てばともに喜ぶ男だったそうです。
そんなAnarchyは、小学生のころからケンカに明け暮れ、いじめっ子を撃破するような親分肌でした。彼のカリスマ性は既にこのころから発揮されていたようですね。
中学生で足に軽くタトゥーを入れたという噂もある裏の道を歩んできた彼は、2000年の活動開始時から各所にタトゥーをちりばめた当時では珍しいバチバチの本格ギャング。
高校時代、地元のお祭りで悪仲間の先輩が暴走族に集団リンチを受け裸でつるし上げられたことから、1年だけという約束で暴走族に入り即総長就任、先輩のリベンジを果たし、ついでに周りの暴走族を仲間に引き込んで大連合を作り上げたという伝説を持っています。
ストリートでは有言実行、実力行使、弱肉強食、一意専心を体現してきたようですね。
1998年にZEEBRAの番組を目にしラッパーを志し、2000年からRUFF NECKとして活動、2003年の自主制作アルバムを経て、2005年にソロでR-RATTED RECORDSからデビューします。
2006年には1stアルバム「ROB THE WORLD」が各種メディアで年間ベストアルバムに選らばれるなどの活躍を見せ、2014年からはavexが運営する「CLOUD 9 CLIQUE」に所属、と錚々たる経歴です。
そんな荒々しくも華々しい壮絶な経歴の中で繰り出されたAnarchyおすすめの曲を紹介しますね。
I'm A Rapper
最初に紹介するのは、年間ベストに選ばれたデビューアルバムから「I'm A Rapper」。
タイトルからも読み取れる自己紹介ともとれるこの曲は、Anarchyがそれまでに経験してきた人生のなかあら築き上げた実力行使、一意専心、弱肉強食に立脚した精神をラップに落とし込んだ王道の一曲。
あたかも抗争中であるかのようなトラック、口ばかりの上辺のラッパーやセルアウトに踊るメディアに対する挑戦的なリリックが、Anarchyの風貌や声と合わさってハードでクールな世界観を作り上げています。
Anarchyが日本語ラップ界に名刺を投げつけたような高圧的なこの曲に、一気に心を掴まれますね。
Where We From feat. T-Pablow
次に紹介するのは2019年4月にavexの公式Youtubeにアップされ1,000万再生超えを誇る T-Pablowとのコラボ楽曲。
ダークで攻撃的なラップ&トラックで、Anarchyが幹部のT-Pablowをはじめとする一大マフィア集団を引き連れて権力を誇示するかのような一曲です。ボス感満載のこの曲、暴走族を統一して大連合をまとめあげたAnarchyだからこそ説得力があり、それを詰め込んだようなMVも必見です。
先に紹介した「I'm A Rapper」が成り上がるとこうなる、というようなAnarchyの歴史を見せつけるこの曲は外せません。
GANGSTAR
続いて4枚目のアルバム「DGKA」から「GANGSTAR」。avex移籍前年の2013年リリースであるこの曲は、アンダーグラウンドでは既にその存在とポジションを完全に確立していたAnarchyの存在証明のようなラップが特長です。
曲全体でシーンをねじ伏せるかのような不敵な構成はまさにAnarchyそのもの。
「俺はここにいる、日本語ラップ界の真ん中、アンダーグラウンドを仕切るのはこの俺。目をそらさずに見ておけよ」と言わんばかりの自信に溢れたラップが印象的です。
フリーダウンロードで配信した米国の配信サイト「Datpiff」「audiomack」のチャートで一位を獲得するなど高い実績を上げたアルバムの代表曲といってもいいでしょう。
The KING
日本語ラップシーンを席巻したデビューアルバムからはじまり、GANGSTARでシーンをねじ伏せたAnarchyはどこに向かうのか。
当然、頂点であるKINGですね。
4曲目は2019年にリリースしたアルバム「The KING」のタイトル曲でもある「The KING」。
はじめてOZIROSAULSを聴いてぶちのめされた男が、実力行使でのし上がって成り上がって、アメリカで1位を取る訳です。そうなると、「誰がこのシーンのKINGだ?」、となりますが、本人がラップでも表現した通り、「般若とか漢とかKREVAじゃない AK マッチョ ZEEBRAでもない KOHHやPablowにはちょっと早い 文句あったら電話ちょーだい」ということですね。
圧倒的な自信と自負、人を束ねるカリスマ性から自然に出てくる「俺しかいねぇ」というラップですが、重ねて続けた「苦情やディスはこちらまで」というラップには、揺るがない自信に加えてこのシーンを背負っていく、全部受け止める、という覚悟すら感じられます。そのバースの締めにはさりげなく、「悪魔が睨んでたって 笑て生き抜く ヤバするぎるスキル」と、ラッパ我リヤの名
曲をサンプリングするあたり、パンチが効いています。
ANARCHY - 奇跡
多くの人を従えた派手なKINGのイメージが似合うAnarchyのも静かに自らをふり返ることもあるのでしょうか。次の曲は、「NOISE CANSEL」から「奇跡」。
「俺にだって怖いときもある、一人静かに朝を待つことだってある、無茶なことも信じてみようぜ」というAnarchyからのメッセージラップです。
楽曲に込めた思いがシンプルに届くように、クリアトーンギターをメインにした落ち着いたトラックがクールです。どの曲にも言えますが、Anarchyの多彩なトラックメイキングのセンスには脱帽です。
MVでは、路上に二人で座り込んで、ひっそりとメッセージを届けるAnarchyですが、逆に強烈な印象を生んでいますね。
成功を手にしたAnarchyが心から思うこと、それは「金なんていらない、信じられる仲間がいればいい」という非常にシンプルな感情であり、KINGも人の子、KINGも同じ人間という感じもします。
ラップにもトラックにも癒される少し異色の一曲でした。
Fate
続いては初期からの一曲。2008年リリースの「Dream and Dream」から「Fate」を紹介します。
自らの生い立ちを綴りながら、「運命なんて蹴っ飛ばす」と言い放つAnarchy。
幼少期に離婚した両親、出て行った母親、離れ離れになった兄弟、先の見えない毎日の中で感じてきたもの、見てきたものをようやく受け止めることができるようになったときに心からしみだしてきたラップなのではないか、と感じます。
悲しい運命だからこそ前に進む、悲しい人生だからこそ高い遠い夢を見て追い求める、そんなAnarchy少年の半生が描かれたこの曲は、ファンならずともマストな一曲。
子どもの頃に、このような想いを抱え人の痛みを知り、仲間に救われ仲間を救い、そうしていく中で自然とと身についていった、自分が掴んでいったものが「カリスマ姓」だったのかもしれませんね。
人生に悩み、人生に迷い、人生に疲れた若者やすべての人にこの曲を送りたいと思います。
Growth
最後は、デビューアルバムからAnarchyの原点といってもいい「Growth」を紹介します。
評価の高かったデビューアルバムの中でも1・2を争う人気曲でもある「Growth」では、Anarchyの自伝。育った町や家族のこと、母親との別れ、そこから始まる悲しい人生とその人生をもがきながら戦いながら切り開いていくストーリーはリアルそのもの。
常に自らの運命と闘ってきたAnarchyが、のし上がっていく伝説の幕を開けたこの曲には、それまでAnarchyのすべてが詰まっています。悲しさも、負けん気も、強がりも、仲間も本音も、すべて入れこんだ、まさに「俺しか書けない歌」ですね。
「この曲を書くAnarchyだからこそ成り上がれたのだ」と確信できる「Growth」、こちらもマストです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今日はラップそのものが人生全てを物語る、人生がラップそのものであるAnarchyを紹介しました。
どんな環境に会っても、どんな境遇にあっても、取り乱さずに同じスピードで突き進んでいく止まらない男、Anarchy。
フリースタイルダンジョンが好きでよく見ているという彼は、フリースタイルバトルで無類の強さを誇った晋平太に一目置いているようで、晋平太に「お前が一番よかったぜ」と気さくに声をかけたり、名古屋駅ではそっと後ろから近づいて「膝カックン」をかましたり、というお茶目な一面も持ち合わせているようです。
そんなAnarchyだからこそ、仲間を惹きつけ、ヘッズを惹きつけ、大きな集団やシーンの中心になり、自然とKINGになっていったのでしょう。
Anarchyから吐き出されるラップは、きっと、人生のバイブルになるはずです。